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第1回 「法律一口メモ」
藤木 久法律事務所 藤木 久(ふじき ひさし)


企業再生の切り札、民事再生法

 平成12年4月1日から民事再生法がスタートしました。
 デパートの「そごう」などが申立てをしましたので、名前だけでも聞かれた方は多いでしょう。企業を再建するための法制度です。これまで企業再建には、和議法や会社更生法がありましたが、これらの法律の反省と良いところを取り入れて新設された法律です(和議法は廃止されました)。会社だけでなく、医療法人(病院)、協同組合なども対象になります。裁判所が迅速に再生の可否を判断します。現在の経営者が経営を続けることが可能な途が残されました。

 しかし、会社を再建させるための手続ですから、かなりの準備と資料が必要です。再生のご相談をうけると、法律事務所はテンヤワンヤの忙しさになります。明日の手形が落とせない、明日不渡りになる、そんな切羽詰まった段階になる前に、ぜひ余裕をもってご相談下さい。
 なお、平成13年*月から、個人にも民事再生法が適用されることになりました。個人の債務超過については、自己破産と任意整理で対処されてきましたが、今後は民事再生法による再起の機会が生まれたことになります。


ご存じですか? 成年後見制度。高齢者社会に向けた新制度です

 従前から、病気や事故や老齢などで、自分の財産が管理できないときは、裁判所に申立てて後見人などを選任してもらうことができました。
 しかし、それはかなり重度の精神障害がある場合に限られ、また健康な方が健常時に自分で将来の後見人などを選ぶことができませんでした。

 将来、少し痴呆になったり、少し身体が不自由になったりしたとき、自分の財産をうまく管理して、安全で確実な老後を送りたい、そんなために、信頼できる人に、財産の管理や施設の入所契約などを任せておきたい、そんな希望をお持ちの方が多いと思います。

 最近の民法の改正で、老齢などによる軽い痴呆でも後見制度を利用できるように拡大されました。また、ご自分で健康なときに事前に後見人を選んでおくことができるようになりました。これが成年後見制度です。
 後見人は原則として誰に依頼してもよいのですが、財産管理の知識と経験をもっていること、信頼性などから、実際には、弁護士に依頼する方が多いと予想されています。 成年後見に興味をもたれましたら、お気軽にご相談下さい。


日常生活には事故がいっぱい、損害保険は大丈夫ですか?

 自動車などによる交通事故が危険なのは常識ですが、それ以外にも、事故による深刻なご相談を本当によく受けます。  自転車で走っていたところ、道路脇の家から子供が飛び出してきた、歩行者の高齢者と接触したなどで、歩行者が転倒し脳挫傷などで死亡したり、重傷を負った。
 駅の階段から足を踏み外して下の人を巻き添えにした。子供同士の喧嘩で相手をケガさせた。ゴルフボールがプレー中の友人にあたった。

 私たちの回りにはリスクが一杯です。何かのはずみで加害者や被害者になりかねません。勿論、こんな場合にも、損害賠償がついてまわります。
 加害者になっても、被害者になっても保険は大事です。漏れがない全方位の損害保険に加入されるとよいでしょう。掛け金は、自動車保険のように高くはありません。


お金を貸すときの知恵

 お金を貸すのはイヤなものです。すんなり返してもらえないことが多いからです。それでもしがらみで断り切れないこともあります。そんなときは・・・
まず借用書を作ることです。時間が経てば忘れたり、とぼけたりします。また貸主や借り主が死亡すると、ますますわからなくなってしまいます。

 金額、返済期限、利子の有無、借り主、貸し主は必ず記載しましょう。借り主からは自筆のサインをとる、印鑑は実印を押印してもらうとよいでしょう。後日に、誰が借り主かがはっきりするためにです。 公正証書にするのもよい方法です。貸主と借り主とが公証人役場に行って手続します。強制執行認諾の文言を記載しておくと、裁判をしなくても公正証書だけで借り主の財産を差し押さえることができます。

 保証人をとる。保証人も迷惑ですが、貸す方とすればぜひとりたいところです。以上の対策をしても、実際にはなかなか回収できません。知人に金を借りなければならないのは、既に銀行や信用金庫などから見放されている場合が多いからです。勇気をもって断るのが何よりの対策かも知れません。


せっかく発明をしたのに・・・出願前は秘密にすること

 優れた発明をしますと、特許権が認められ、出願から20年間にわたって独占的な権利が認められます。  でも、いくら優れた発明でも、特許庁に出願しなければなりません。そして、出願時に、新規性、進歩性、先願であることなどの特許要件が要求されます。したがって、よい発明をして嬉しいからといって、それを言いふらしたり、見せて回わると、出願時には公知になってしまい、特許をとれません。
 よい発明をしたら、まず弁理士さんに相談をし、特許出願をすることが大切です。


どうする? 交通事故で加害者の車が保険にはいっていないとき

 自動車運転者が強制保険や任意保険にはいるのは最低限のルールですが、保険にはいっていない車が案外あるのも事実です。本当に困ったものです。さて、こんな場合ですが、以下の方法をご検討下さい。

・政府の保障事業
 加害車が強制保険に加入していないときは、政府が自賠責保険とほぼ同じ基準で損害を填補するための金員を交付してくれます。これで自賠責程度の補償を得ることができます。

・無保険車傷害保険
 被害者が無保険車傷害保険に加入していれば、加害者が強制保険や任意保険にはいっていない場合は、被害者が契約している損害保険会社に対し、加害者に対するのと同じ請求をすることができます(保険会社はその保険金を支払わなければなりません)。皆さんが契約されている自動車保険は総合保険で自分では気づかないうちに無保険車傷害保険に加入していることがあります。ぜひ、調べてみて下さい。

・搭乗者保険
 保険を掛けた自動車に搭乗中に事故に遭うと、搭乗者にこの保険金が支払われます。入院1日いくら、通院1日いくらと定めた定額式ですし、事故日から180日までしか保険金は支払われませんから、万全というわけにはいきませんが、それでも大いに助かります。 なお、搭乗者保険は加害者が自動車保険に加入していても、請求することができます。

・加害者本人に請求する
 加害者に請求できるのは当然です。
 もし加害者が運転していた自動車が加害者の勤務会社の車であったり、加害者が仕事中に起こした事故であると、会社は自賠法3条の責任や、使用者としての責任(民715条)を追いますので、会社にも損害賠償を請求できることになります。

・労災保険の請求
 被害者が仕事中に交通事故時に遭遇したときは、労災保険からも保障が支払われます。なお、加害者が自動車保険に加入していても、被害者は労災保険へ請求することができます。


交通事故のトラブルはどう解決したらイイの?

 話し合いで解決すれば一番ですが、それが無理な場合も少なくありません。 解決の方法として次のものがあります。

・簡易裁判所での調停
 裁判所が間にはいってくれる話し合い解決の制度です。合意が成立しないと解決にはなりませんが、かなりの割合で話し合いがまとまっています。加害者と被害者のどちらからでも申立てできます。

・訴訟
 裁判所に判決で判断してもらう方法です。加害者と被害者のどちらからでも申立てできます。

・交通事故紛争処理センター
 大阪の北浜に交通事故紛争処理センター大阪支部があり、近畿全域の事件を扱っています。被害者から加害者(保険会社に加入している場合)を申立てます。費用が無料なことなどから、大変利用者が多いようです。弁護士が斡旋委員になって、まず話し合いでの解決が試みられます。これで解決することも多いのですが、解決しない場合は、申立人が打ちきりか、審査への移行を求めるかを判断します。

 打ち切りになれば、被害者が裁判所へ訴訟を提起することになるでしょう。審査とは、センターの審査会が裁判所の判決のように決定をする制度です。被害者側はこの審決結果に拘束されませんが、保険会社は拘束されます。


隣近所のトラブルはどう解決したらイイの?

  ご近所との問題もこじれるとやっかいなものです。一旦こじれて、話し合いでも解決しない、あるいは話し合いすら冷静にできないことも少なくありません。
 通常の事件と同じく、訴訟で解決できますが、まず調停を考えてみてはどうでしょう。簡易裁判所でおこなわれますが、調停委員2名が間にはいって話し合いを進めてくれます。訴訟ほど、堅苦しくなく、裁判所へ納める費用も安く、一般的には早く解決します。
 手続はそれほど複雑ではありません。簡易裁判所に電話か訪問して聞いてみてください。
 
 
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