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第3回「私の事務所のIT革命」 連載文(その1)
山口利昭法律事務所  山口 利昭(やまぐち としあき)


 はたして、連載するだけの価値があるかどうかは不明だが、これから私の事務所のIT化に関する作業を皆様に お伝えしようと思う。ご承知のことと思うが、私はあまりIT関連だけでなくパソコンのハード、ソフトについても、 あまり詳しくない。また、実際のところパソコンについてもあまり興味がない(これは私がべんべんネットに入会 した頃から公言してはばからないことである)ただ、パソコンを利用して何かを行うことは好きである。たとえば それはネットによる情報収集だったり、メール交換だったり、オークションだったりする。もし、それらのことが パソコンを利用することなく、他の媒体によって可能なのであれば、(たとえばテレビ電話など)私はそちらの媒体を選んでいたと思う。

 これまでの私のパソコン歴は約7年。つまり独立とほぼ同時に事務所にパソコンを導入した。忘れもしない、最初のパソコンはパナソニックのウッディというやつだった。(テレビも見れるし、当時斬新だったパワーディスクなる大容量記憶装置もついていた。)まあ、そのようなわけで、私は自分の好きなことに到達するためにパソコンをいじってきたわけだが、やはり事務所の仕事をするうえでも、最近もっとパソコンを有効に活用できるのではないか・・・ と考えるようになった。そんな折り、協同組合のネット関連の委員長役を仰せつかり、コンピューターフェアのお世話をする機会があり、システムエンジニアの谷川氏と出会うことになった。谷川氏は有限会社ティーエムピーの代表者ということだが、以前は某大手コンピューター機器メーカーに勤務されていた。ちなみに、谷川氏との出会いは谷川氏がIT化をはかった事務所のボス弁先生との雑談がきっかけだった。そのボス弁先生から谷川氏を紹介されたのだが、最初谷川氏と出会ったときの印象は、どうみても私よりも年上だという印象だった。(後日、谷川氏は私よりも年下であると知ったわけでが)なんとなく誠実そうなタイプだ。バッチをつければ、一見するとこの業界の人といっても通じるタイプだ。

 もちろん、谷川氏と出会ってすぐに、事務所のIT化をお願いしようと考えたわけではない。谷川氏はそれまで、他の法律事務所のIT化の経験があった。その話を聞くうちに、谷川氏の仕事のスタイルに触れることができた。そのことが、一度IT化を検討してみようとの動機付けになったことは間違いない。谷川氏の仕事のスタイルというのは、以下のとおりである。(と少なくとも、私には感じられた。)

(1)ひも付きではない。つまり、谷川氏は独立して仕事をしているエンジニアである。どこかのハードもしくはソフト会社とつながっているわけではない。したがって、システム導入にあたって、新しいハード等の購入を前提としないのである。(もちろん、話を聞くうちに、こちらが新しい機器がほしくなって買い換えることは別だが、それも谷川氏からはそのような話は出てこない)

(2)売りっぱなしではない。つまり、システム導入後の物的・人的フォローが期待できるということである。システムを導入したからといって、事務所が翌日から効率よく稼働するわけではない。理想に近い形で運営するためには、システムを導入した事務所のスタッフの能力が向上する必要があるし、また何か問題が発生した場合に、谷川氏のフォローが受けられる体制が必要だ。そういった面で、人的な能力の向上を援助してくれて、かつフォロー自体も期待できることが大きな動機付けとなった。

(3)そして、谷川氏と何度か話をしてきたなかで、最も衝撃的だったのが、「パソコンを仕事の道具として認識せよ」との思想であった。これは正直言って、私にとっては全く理解困難であった。おもしろくなければパソコンではない。パソコンの向こう側におもしろいことがあるからこそ、私はパソコンに触っていたのだ。しかしながら、谷川氏は以前からSEとしていろいろの苦労があり、コンピューターが業務上使用困難となった場合の企業の損失と向かい合ってきた人である。やはり、パソコンに対する認識の差は歴然としていて当然なのかもしれない。

 私は以上のような谷川氏の話から、事務所においても、仕事の上でパソコン(というよりはシステムというほうが妥当かもしれない。私にとってパソコンとは、遊びの代名詞のようなものだったので)を整備してみようという気持ちになった。もちろん、事務所を新設したり、大きく設備投資をしてシステム化をはかりたいと思うのならば、事務所にやってくるリース関連の業者の方や、ハード販売会社に一括して依頼したほうが、見栄えもいいし、システムの効率もいいであろう。しかし、私の事務所のように開設して7年、とりあえずバラバラではあるが、何台かハード機器もそろっている、あまり費用はかけたくない、という向きには、谷川氏の話は説得力があり、誘惑的でもあった。

 事務所のIT化をはかろう・・・、私はささやかな決心をした。

 平成13年11月のことである。

 (つづく)

 
 
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